子どもの頃、道端や畦道で遊んでいた草花の正式名称はあまり知らなかった。でも、その遊び方や楽しみ方は知っていて、周りの子と共通の知識があるものが多かった。
名前は知らなくとも、遊んでいた記憶は私の中に根を張っている。だから、ずっと変わらず覚えておけると思っていた。
でも最近、「あれってどんな草だったんだっけ?」と思うことが増えてきたのだ。遊び方は覚えているけど、その形状を忘れかけているものがある。これは早いうちに書き留めておかなくては、と何のためか分からない焦燥感がある。
春
ナズナ。その葉っぱを少し引っぱってブラブラにして、耳元で振ると、カサカサと音が鳴った。
タンポポ。黄色い花か綿毛の茎を水に浸して、くるくると巻かれていくのを眺める。
ムラサキケマン──当時は名前なんて知らなかった。なでることでその種を弾き飛ばす。
ハルジオン。どこにでもあるその花を親指と人差し指で挟んで弾き飛ばす。できるだけ遠くに飛ばすことが肝心。
シロツメクサ。たくさん摘んで花冠か首飾りにする。私は長く上手に編むのが得意だ。
ノビル。花穂が立ち花開く前の長い茎を折り取って、左右に少しずつ折りつなげていく。薄い皮を切らずに折り続けていくとネックレスのようになる。
野イチゴ。摘めるだけ摘む。実を割り、ムシがいないことを確かめてひたすら食べる。
オジギソウ。見つけたらとにかく触っておじぎさせる。
夏
レンゲやツバキ。花のガクを取り除きその蜜を吸う。ほのかな甘さを楽しむ。
ツバキの葉っぱ。しなやかで硬い葉を選び、くるくると巻いて片方をつぶし笛を作る。鳴らすにはコツがあり、私は鳴らすのがうまい。
チガヤ。あるいはチガヤのような硬くて細長い葉。葉を縦に三分割して、中心を指にあてがって両端を引っぱり飛ばす鉄砲。持ち方を誤ると、硬い葉で指が切れることもあるから、注意が必要だ。
秋
ヤマノイモの蒴果。茶色くてツルツル、カサカサしたそれを鼻にくっつけて違和感を楽しむ。どこにでもあるわけではないので、見つけるのも楽しみのひとつ。
栗。そのへんに落ちている毬栗を靴で上手に割って実を持ち帰る。
紅葉した葉。できるだけきれいな色の葉を拾い集める。
冬
枯れ葉を愛でる。踏む。集めて頭上に放り投げる。
今になって調べてみると、そんな名前だったのかという植物もある。いつの間にか名前を知っていたものもある。名前を知らなかった頃の遊びは、名前よりも深く、季節と結びついていた。
思いつくままに書いたけれど、忘れてしまっているものもたくさんあるはずだ。田舎で人が少なく、誰かと遊ぶよりも、暇な時間をどう楽しむかに力を注いでいた。自分の機嫌の取り方を、私は自然の中で学んだのかもしれない。
