『ワンダー』R・Jパラシオ 訳 中井はるの (ほるぷ出)
おススメ対象 小学5年~高校生・大人
映画になっている作品で、中学生におすすめされたので読んでみました。読み応えがあります。
後半はずっと泣きながら読みました。子どもが頑張っている姿に接すると、涙が止まらなくなります。
でも、なんだかずっと違和感を持ったまま読んでいました。
子どもに愛情深い両親が、子どもの前で先生の名前をいじって下ネタを言うことの不思議。名前をネタに相手を馬鹿にするのがジョークとして描かれることへの抵抗感。
子ども同士も辛辣なやり取りが多く、そこで生じた問題に大人が介入することを嫌う描写が多い。
日本だったら、すぐに問題視されるような発言や嫌がらせが学校で普通に行われ、それを大人が気づいてもあまり手助けもしない。見守るという意識が強いのだと思う。
大人に助けを求めることは人間としてダメな奴とみなされるのか「チクらない」ことがよしとされる風潮が描かれる。
だからなのか、子どもがやられたらやり返す行為もなんとなく許されていく。正しさよりも勝つことが重要視される。
悪い奴は最終的には痛めつけられ、主人公が勝ち、悪い奴が排除される。それがよしとされる。
悪い奴として描かれる子どもも守られ育てられていくべき存在であることは、なんとなく置いてけぼりな感じなのです。
悪人が排除された後、主人公を取り巻く世界では多様性が受け入れられ、主人公が注目されハーピーエンドになる。当然、悪人扱いされた子の多様性は無視されたままで。
そして、主人公の母親や父親のあふれんばかりの子どもへの愛情が美しく描かれていくのです。
でもこれって、主人公の家が生活にゆとりがある家庭であるから成り立つ話ではないか、というところも透けて見える。
ここに出てくる親子愛や姉弟愛は感動を覚えるほど素晴らしい。私はここまで直球の愛情を子どもに伝えられないと思う。特にお母さんの強さに感動する。
でも、最後まで違和感がぬぐえないのは、単に文化の違いなのでしょうか。