大きな出来事があったわけではない。今直面している問題は、些細な問題だと分かっている。時間しか解決し得ない問題であることが、自分を困らせているということも理解している。自分が頑張っても解決しない問題だということが厄介なのだと言い聞かせる。
そんな厄介ごとは毎日生活をしていれば、避けて通れないものだ。出来るだけ心地よく、前向きに生きていたくても、そう簡単には実行できない。十分に満たされているはずの環境に自分があることは分かっていても、それでも思うように生きるのは難しい。
そんなときは、いつもより少し早く寝てみたり、食事をきちんと作ったり、軽く運動をしてみたり、推しの動画を見たりする。ネコに触れて心を落ち着かせる。それでも、モヤモヤした気持ちが払しょくしきれないときがある。
最終的に頼りになるのは読書だ。問題は、どんな本を自分が求めているかだ。たくさんの本の中から、自分が手に取りたいと思った本。それが大抵自分を助けてくれることを、これまでの経験から私は知っている。
おススメ対象 中学生~大人
ファンタジーは、設定が入り組んでいたりすると、物語に入り込むのが難しく感じられることがある。この物語も設定が詳細で、読むのに苦労するだろうと感じていた。知らない国の知らない掟。知らない習慣と、見慣れない名前。自分の生きる世界とは全く違う世界。
読み始めてしばらくすると、少し読むのが億劫になっている自分に気付く。それを無視してとりあえず読み進める。複数の国の関係を理解するのに注意が必要で、長い長い読書に気持ちが途切れてしまわないか心配になり始めたころ、ユリアのまなざしや、レーエンデの風が頬にあたるのを感じ始める。そうなってからはあっという間だった。
ユリアの成長を息をつめて見守り、彼女の強さに圧倒され、気持ちが前向きになっていく。これは、全く違う世界の話だけれど、今を生きる人の物語でもある。自分の人生を自分で引き受け、責任を持ち、自分のために生きる。そうすることでしか、私たちは自分を満足させて生きられないのだ。