お土産の定番お菓子が好きだ。
沖縄の「ちんすこう」から北海道の「白い恋人」まで、長く愛されているお土産はやっぱり美味しいと思う。
でも、スーパーに並んでいる定番お菓子は、季節限定品を買いたくなる。
咲乃月音『私たちのおやつの時間』を読み終えた。
お菓子にまつわる短編集で、それぞれの物語は独立しているのに、 最後には登場人物たちがゆるやかにつながっていく。 その連なりが、おいしいお菓子を食べ終えたあとのような、 ふわっと温かくなる余韻を残した。
最初の話に登場するリコとマドの恋は、 切なくて、甘くて、胸がぎゅっとなる。 “キュン死”という言葉が冗談ではなく思えるほど、 静かな痛みと愛しさが混ざり合っていた。
自分にとっての「思い出のお菓子」はなんだろう。
浮かんできたのは、どれも手作りのものばかりだ。
ばあちゃんが作ってくれたおはぎ、くりだこ、ゆべし。ばあちゃんのレシピは残っていないから、もう食べることのできないおやつたち。
まだ元気だった頃の母が作ったババロア、バナナケーキ、シャーベット。大人になって、同じものを作ってみたけれど、あの頃の特別感までは再現できなかった。
自分が子どもたちに作っていた、きなこ飴、イチゴジャム、オートミールレーズンクッキー。
家で食べるお菓子の記憶は、手作りのものの方が圧倒的に深い。 味だけではなく、そのときの空気や匂い、 切ない思い出が同時に思い出される。
最近は手作りをすることが少なくなったけれど、“手間のある甘さ”だから特別心に残るのだろう。
今回の本で特に惹かれたのは、 食べたことのない異国のお菓子たちだ。
- インドの ガジャルハルワ
- スペインの ポルボロン
- ポーランドの 鳥のミルク
どれも聞き慣れない名前が素敵だ。 レシピを検索したら作れそうだった。いつか作ってみたいと思う。
ガジャルハルワのゆっくり煮詰める時間、 ポルボロンの粉を炒る香り、 鳥のミルクのふわふわが固まるのを待つ時間。
そのどれもが、自分のための時間になる気がしている。 “自分を大切にするための時間”を持てたらいい。
登場人物たちを思い出しながら、 レシピを眺め、材料を想像するだけで 小さな癒しが始まる物語だ。
