大人になったら、当たり前に仕事をするのだと思って過ごして来た。
世の中には数えきれないほど仕事があり、その何かに自分は成れるはずだと思っていた。私の未来は果てしなく広く、明るい気がしていた。
だから学生のうちは、勉強を頑張り(出来る範囲で)、部活に精を出し(たまにさぼり)、大人の言う決まりを守る子ども(怒られるのがとにかく嫌)だった。
大学に進学してアルバイトをいろいろ経験した。
働いてお金をもらうことは立派な仕事のうちだが、アルバイトはアルバイトであって「社会人」ではない気がするものだ。
大学卒業が徐々に近づいてくると、いよいよ「社会人」という言葉が身近に迫ってくる。アルバイトではなく、就職活動をして本採用の仕事に就く。はずだった。でも、私が大学を卒業する頃、世の中は超がつく「就職氷河期」に入っていた。とにかく就職先がない。本当にないのだ。周りの友人たちのほとんどが、なかなか就職できず、暗澹たる気持ちを抱えたまま、とりあえず大学を卒業していった。
就職がうまくいかなかったからか、なんとなく大人になり損ねた気分を抱えたまま、年だけはこんなに取ってしまった。
私という存在が、社会の一部として何かに貢献したり、誰かの役に立ってたりする実感が乏しいまま、こんな年になってしまった。
「ロスジェネ」世代という言葉が、しきりに使われるようになったのはいつのころからだろう。その言葉に自分も括られる一人だと気付いたのは、まあまあ最近のことだ。
私が失ったものは何なのか。でも、そもそも手に入れてさえいないのだから、失うこともできなかったはずだけど。
大学生のころ、この本を読んでいたら、就職先がない時代の私でもそれなりに満足する仕事に就けたのかもしれない。
就職活動はきっとものすごく疲弊する活動だ。
その伴走者としてこんな本が手元にあったら心強いはずだ。