庭のムシ⑰

子どものころ、このムシを目にする機会は多くありました。あまり詳しいことは知らなかったのですが、身近なムシで「ショウジョウバエ」と呼んでいた記憶があった気がして、今日までそんな名前だろうと思っていました。
でも、今日これを取り上げるために調べたところ、「ショウジョウバエ」は俗にいう「コバエ」のことでした。そういえば、そうかも。どこかで勘違いして覚えてしまっていたようです。
正しくは「アメリカミズアブ」。そんな名前だったとは。
日本での俗名は「便所バチ」だそうです。確かにそう呼んでいた記憶があります。水洗便所がない時代、便所にたくさんいたからそう呼ばれるらしい。うちも汲み取り式便所だったから、たくさんいました。
でも、人には近寄ってこないムシなので、たくさんいてもあんまり印象には残っていないムシです。それもそのはず、成虫には口がなくエサを食べないから、繫殖するため以外に腐敗有機物には近寄らないのです。
口がない成虫は、カゲロウくらいしか知りませんでした。
英語圏では「フェニックスワーム」と呼ばれているそう。日本の俗名と同じような理由で付いた名ですが、こちらはずいぶんカッコいいですね。
「アメリカミズアブ」はその特異な特徴から注目を浴びているムシです。
①環境に優しい生産過程
アメリカミズアブの幼虫は大量の有機物を摂食し、栄養価の高いタンパク質に変換することができる。肉や魚に比べて生産の環境負荷が少なく、持続可能な食糧供給の未来を示唆している。
②廃棄物の削減
アメリカミズアブの幼虫は、食品廃棄物やパーム種子などの有機物をエサにすることができる。アメリカミズアブの養殖は廃棄物の削減につながる。
③高い栄養価
アメリカミズアブの幼虫は、優れた栄養バランスを持つタンパク質を含んでいる。家畜や養殖魚、実験動物の代替飼料として注目されている。

なんだか、すごいムシなのですね。
ほとんどなんでも有機廃棄物を食べるという「アメリカミズアブ」の幼虫。それを養殖し、これまで埋め立てられ、メタンを排出する要因になっていた食品廃棄物を食べつくしてもらう研究も進んでいる。
我が家のコンポストに「アメリカミズアブ」の幼虫が初めて大量発生したときは、あまり目にしたことのないその姿に少し慄いてしまいました。蓋をしているのに、どこから入ったの??と思っていましたが、上の写真、隙間から卵を産んでそうですよね。そうやって増えたのでしょう。
ちょっとその辺にはいない幼虫の姿なんですよね。見慣れないと気持ちが悪いのは気持ちが悪い。
でも、彼らがコンポストに住み着いてから、すぐ満杯になっていたコンポストが半分もたまらない状態が何年も続いています。食べる量がすごいのでしょう。
知れば知るほど面白いムシです。