「すごい小説を読んでしまった」
読後の感想はそれだ。
作品として純粋に面白い。
その上、いろんな学びと気づきが詰まっていた。
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おススメ対象 高校生~大人
子どもを産んで親になったときに、子どもに身につけてほしいと思ったことのひつとつが「優しさ」だった。
誰かを傷つけたり苦しめたりしないように、「優しい人」になってほしいと心から思った。
「優しい人」であれば、自分の子も誰かに「優しく」されるはずだと疑いなく信じていた。
たくさんの人と出会いながら、たくさんの人と関わり生きていかねばならない社会で「優しさ」は必要不可欠なものだと考えていた。
今もそう思ってはいる。
でも、『流浪の月』を読み、自分が子どもに求めてた「優しさ」ー自分が感じる「優しさ」ーだけでは完ぺきではないのだということを思い知る。
「優しさ」が、誰かをいたわる思いが、相手を傷つけることもあり得るのだ。
人は、自分が思うほど他者を理解することができない。今自分の周りで起こっている出来事の全容を理解することも不可能に近い。
私たちが触れる情報は、二次情報であることがほとんどだからだ。いや、すべてが二次情報だと言っていいのかもしれない。
誰かの視点を通してしか、私たちは世の中の出来事を知ることができないのだ。
自分の目の前に起きている事実でも、自分の目を通してしかその出来事を把握できない。当事者の目を持つことなんてできないのだ。当事者じゃないのだから。
どれだけ、学び経験しても、自分が知らない現実はそこにある。
そのことを忘れずにいたいと思う。
誰かの幸せを、誰かの平和を願う私の気持ちが、無意識に誰かを傷つけてしまうことがあるのだということを、常に覚えておきたいと思える作品だった。