知ることは大切だろうけれど


世の中の仕組みを、自分はどれくらい理解しているのだろう。

ずいぶん年も取ったし、新聞を読んだり本を読むことでいろいろ学んではきた。でも、それらの情報はあくまでも二次情報であり、誰かの視点を通した情報でしかないのだから、本当のことを分かっているとは言えないのかもしれない。

いや、たぶんそうなのだろう。どんなに情報を集めても、ある事実の全容を完全に知ることは不可能なはずだ。

でも、今を生きる人間として、世の中のことを少しでも理解すべきだろうと思ってはいる。理解することが、よりよく生きていくことに繋がることは分かっている。知らないより知っている方が、お得な気もする。

でも、この本を読んで、その気持ちが揺らいだ。

知らなかった事実がここにはある。

うすうす感じてはいたが、見ないふりをしていた事実がここにある。

よく考えるより先に、促されるまま行動してしまっていた過去の自分がここにはいる。ああもう、取り返しがつかない。あるいは、頑張れば取り返せるのかもしれないけれど、取り返すための気力が湧かない。

私はもうすでに、今の日常を無事過ごすことに手一杯なのだ。

確かに、「政府のやりたい放題」から身を守るためには、知ることから始めるべきだろう。

でも、相手が大きすぎる気持ちも湧いてしまう。それに対して、自分の存在はなんて小さいのだろう。

知ってしまったその事実の衝撃が大きくて、打ちのめされてしまった部分もある。

知らなければ、損はしつつも、お気楽に生きられたのかもしれないと思ってしまう。無責任な考え方だとは、重々承知の上で。

知ってしまった事実の大きさに、暗澹たる思いに陥ってしまったけれど、やっぱり読むべき本だと思う。読んでよかったのだろうよ、私。そう自分に言い聞かせている。

そして、知ることは大変な結果を生むこともあるけれど、知らないまま過ごしたくはないという結論に、今はもう一度たどり着いている。

自分の身は自分で守らないといけない、そんな世の中にますますなっていくのだろうか。