寒い朝に読み終えた一冊が、思いがけず心の奥を温めてくれた。
片桐はいり『グアテマラの弟』。
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読み終えたあと、まるでいい温泉につかった後のように、身体の芯がじんわりほぐれてポカポカしていた。
表紙の手触りも、手に取ったときの存在感も、最初からしっくりきていた。読みたい本のリストに入れていた理由は忘れてしまったけれど、ぽんと胸に収まる本だった。
グアテマラのアンティグアを“生きていく場所”として選んだ弟。
いつの間にか会話をしなくなっていた姉弟が、弟が遠くへ移住したことで、むしろ言葉が増えていくという不思議さ。
そして、姉である片桐さんがアンティグアに滞在し、軽やかにその土地の空気を楽しむ姿が、読んでいるこちらまでふっと肩の力が抜けるように伝わってきた。
生まれる場所は選べない。
だからこそ、生まれた土地に違和感を抱く人がいるのは自然なことだ。
今いる場所が生きにくい人にも、世界のどこかに“自分が呼吸しやすい場所”があるかもしれない。
そんな可能性を知るだけで、生きることに少し前向きになれる。
そして読んでいるときに、我が家の子どもたちのことを思った。
気づけば、かつての片桐姉弟のように、いつの間にか会話が少なくなっている子どもたち。
親としてはつい心配になるけれど、片桐さん姉弟のように、ある日ふとしたきっかけで言葉が戻ってくることもあるかもしれないと思うと、「心配しなくてもいいのかも」と思えた。
遠くへ行く人も、行かない人も、それぞれの“生きたい場所”を探している。
片桐はいりさんの旅は、そんな当たり前のことを、温泉の湯気みたいにやわらかく思い出させてくれた。
