本が私を見つけてくれる


近所の本屋さんを月に一度歩く。
隅から隅まで棚を眺め、購読している本とは別に、気になった本を2~5冊ほど選ぶ。 便利さだけで言えばネットで買うほうが早いし確実なのに、どうしても本だけは本屋で手に取りたい。
どの本を買おうか、その「迷う時間」が、日々の疲れをふっと忘れさせてくれるからだ。

『本屋さんのある街で』を読んだとき、私はこの習慣がただの買い物ではなく、心の回復の営みなのだと改めて思った。

本屋は、便利さとは別の次元で、私の生活を支えてくれている。だからこそ可能な限り続いてほしいと願わずにはいられない。

本屋で本を手に取るとき、時々「本の側が私を見ている」と感じる瞬間がある。 その時の私に必要な本が、棚の影からそっと姿を現すような感覚。
大人になると、誰かにすべてを話すわけにはいかないことが増える。 どうしようもない不安やモヤモヤを、言葉にできずに沈めてしまうことがある。

けれど本に対しては、説明しなくても、取り繕わなくても、強がらなくてもいい。 ページを開いた瞬間に、「今日はその気持ちのままでいていい」と言ってくれることがある。
私は何度もその体験に救われてきた。

本屋で迷う時間と、本が私を見つけてくれる瞬間。
そのふたつが、静かに私を支えている。
だから私は今日も、本屋の灯りが消えない街を願って歩いている。