「漢文」と聞いて、ワクワクする人はほぼいないだろう。
中学や高校の国語の時間に習った、不思議なルール、返り点や置き字などを瞬時に思い出せる人は、勉強を頑張った人に違いない。
学校から離れてしまえば触れ合う機会の減る漢文。でも意外にも漢文は、ふとしたときに自分の気持ちに寄り添ってくれる。
漢文には、白文・訓読文・書き下し文という三つの姿がある。
自分で漢文を読んでみたいと思い、問題集ではない漢文の本を探したとき、ほとんどの本は「白文+書き下し文」の構成になっていて、手に取る気になれない分厚さだったりする。訓読文と書き下し文のセットで載っているものは、なぜか少ない。
「漢詩」なら訓読文と書き下し文がセットになっている本もあるけれど、散文になるとぐっと減る。
白文の方が、見た目がすっきりしているからだろうか、あるいは訓読文につける訓点は活字にするときに、大きな労力を要するからかもしれない。
そもそも、書き下し文があるなら、訓読文は必要ないからだろう。
けれど、漢文に親しみたいと思い始めた人には「訓読文+書き下し文」の方が親切だと思う。
そんな中で、ようやく「これだ」と思える本に出会った。
『絵でよむ漢文』 という一冊だ。
短い漢文が中心で、厚さも手頃。内容も平易で読みやすく、しかも絵が添えられているから、視覚的にも理解しやすい。漢文というと「難しい」「堅苦しい」というイメージがつきまとうが、それを払しょくしてくれる本だ。
漢文は改めて読んでみると、心に染み入る言葉が多い。若いころには難しく感じた言葉が、今読むと胸に落ちる。経験を重ねたぶん、共感できる部分が増したのかもしれない。
この本には短いコラムもついていて、それがまた面白い。
たとえば孔子の「志学」。
「十五にして学に志す」という、あの有名な言葉だ。
これは「偉大な聖人の模範的な生き方」として捉えていたけれど、そうではなく、苦笑まじりの“負け自慢”なのだという。
本当は「十四までは学問が嫌いだった」という意味だと知ると、孔子がぐっと身近に感じられる。完璧な聖人ではなく、迷いながら、遅れながら、それでも学びに向き合った普通の人間として立ち上がってくる。
漢文は難しいもの、という固定観念を崩してくれる一冊。
気負わずに手に取れて、でも確かに心に残る。
漢文の勉強を始めた人にも、肩の力を抜きたい人におすすめの一冊だ。
