庭のムシ㉔

体側の縞模様がおしゃれな「ホオヅキカメムシ」。動きは素早くないけれど、飛ぶと気になるので、好きかどうか聞かれたら、あんまり好きではない。
子どものころ、最初にカメムシとして認識したのは「マルカメムシ」だった。
「マルカメムシ」はコロンと小さい形をしているが、見た目に反してものすごく臭い。どのくらい臭いかというと、姿は見えなくても傍にいたらどこかにいることが分かるくらい臭い。あるいは、洗濯物にとまると、飛び去った後もにおいが残るほど臭い。誤って素手で触れてしまったら、洗ってもにおいが取れないくらい臭い。
じゃあ、それはどんなにおいかと問われたら、それに関しては答えに困ってしまう。形容しがたいけれど、想像しただけでにおいが漂ってくるようなにおいだ。
そのマルカメムシの印象があるから、大人になるまで「カメムシ=物凄く臭い⇒嫌なムシ」だった。
でも、実は、マルカメムシ以外のカメムシはそんなに臭くないということを大人になって知った。
恐らく、世間一般にカメムシは臭いと思われている。だからカメムシを嫌う人は多いだろう。
カメムシは刺激を受けると、足の付け根にある臭腺から自己防衛のために臭いを発する。そう考えてよく見ると「ホオヅキカメムシ」の足は太くて立派だ。においをため込むために発達したのか、やけに太い。
カメムシの天敵はカマキリ、クモ、アリ、鳥、トカゲなどがいる。けっこう敵が多いから、生き残るのは大変なのだろう。
でも、残念なことに、カメムシの臭いはさほど自己防衛になっていないようだ。カマキリなんて、その発する臭いをもとにして、カメムシを感知していると言われている。
そもそもカマキリは、触覚にある嗅覚受容体で臭いを感知し、獲物を探すのだから、カマキリにとってカメムシの臭いはありがたいだけのものかもしれない。
でも、家に入ってきたカメムシをネコが捕まえようとするときには、そのにおいが役に立っているようでもある。我が家のネコはカメムシに対して2、3度ネコパンチしたら、逃げるようにカメムシから離れる。おそらく、ネコにとっては嫌な臭いなのだろう。
マルカメムシに比べると、確かに臭くはない「ホオヅキカメムシ」。だけれど、まあまあ大きくて気になるので、家に入ってきたときはそっと、外へでてもらうようにしている。
そういえば、「マルカメムシ」をこの何年かは全く見ていない。「マルカメムシ」も数が減ってきてるのだろうか。

そんなことを思っていた4日後。家の中で本当に久しぶりにマルカメムシに出会う。噂をすれば陰。久々に出会ったマルカメムシは以前よりあまり臭くないように感じた。