バターの香りが香ってくる


美味しいものが食べたい。

それと同じくらい、美味しい食べものが出てくる本が好きだ。題名や表紙に食べものの要素がある本を見つけると、とにかく読んでみたくなる。なぜだか分からないけれど、「間違いない」気がするからだ。

子ども頃からそうだった。

小学生のころは「こまったさん」シリーズが好きだった。

図書館にあったシリーズ全てをくまなく読んでいた記憶がある。ワクワクしながら物語を楽しみ、紹介されたレシピを見て、こまったさんのように美味しいご飯を作り上げる自分を想像していた。こどもだったから、たぶん実際につくってはいなかったと思うが、美味しいご飯を作った自分を想像して、楽しんでいた記憶がある。

「スプーンおばさん」も同じように好きだった。

トラがハチミツになる話も無性に好きだったな。

どうしてこんなに惹かれるのかは分からないが、とにかく好きなのである。

子どももやっぱり食べものが出てくる絵本が好きだった。読み聞かせた絵本のなかで『ぐりとぐら』と『カラスのぱんやさん』は本当に何度も読んだ。

同じように、食べものが出てくる本を好きな人はいるようで、本の中に出てくる料理のレシピ本なんかも結構ある。

美味しいご飯が物語の中心になっていたり、一つのエッセンスになっていたりいろんなタイプの本があるが、レシピが載っていると作ってみたくなるものだ。上手くいくものといかないものが当然あったが、我が家の定番になったレシピもいくつかある。

食べものが出てくる本は、食欲の秋と読書の秋、どちらの欲も満たしてくれるから今の季節にぴったりだ。今年の秋もけっこう読んでいる。

読んで作りたくなった本。

読んでいる間中、バターの香りが私の中を満たしていた。バターの香りは幸せの香りだ。カロリーとか肌荒れとかを完全無視して、バターの香る焼き立てのパウンドケーキが食べたくなってしまった。

いつ作れるか分からないけれど、とりあえず無塩バターだけは買っておいた。少し寒くなったら、焼こうと思っている。