イネカネムシ


庭のムシ㉗

カメムシのなかでは、ペラっとした印象を受ける薄茶色のカメムシ。茶色で目立たないので、いてもあまり気にならないムシです。

少し透けるくらいの色合いをしています。この形のカメムシは、顔に愛嬌があります。背中の模様ではなくて、本来の顔がです。

瞳が粒らで離れた位置についているからでしょうか、どの色のカメムシもほんわかとした顔をしているのです。見かけたら、取り除いたりする前に顔を観察したくなるムシです。

このカメムシの名前、特別に気にしたことがありませんでした。形がだいたい同じだと、色が違っても同じカメムシだろうと思っていました。でも、それぞれのカメムシに名前があります。結構な種類がいるようです。このカメムシは「イネカネムシ」という名前でした。

その名の通り、イネを食害する害虫です。イネカネムシに吸汁されると、収穫量や品質が悪くなるため、結構厄介なムシのようです。

我が家で見つけたときは、一匹だけがじっと佇んでいたので、たまたま飛んできた個体だっのでしょう。あるいは、越冬するための場所を探していた最中に、風に運ばれてやってきたのかもしれません。イネカネムシは、移動するとき数百から数キロほど移動するようですが、飛行能力はあまり高くないため、風の影響を受けやすいのです。

カメムシは、飛んでるときの羽音が大きく、飛び立った直後は驚かされることがあります。特にジューンベリーやブラックベリーを摘んでいるとき、耳元で「ブーン」と飛ばれると、思わず首をすくめてしまうほど驚いてしまいます。飛び立つまでは、存在感があまりないのも驚く要因です。とまっているときは動きが緩慢で静かなので、葉っぱに潜んでいるとほとんど気づくことがありません。

触れると、独特の臭いを出すカメムシ。でも、イネカメムシの臭いはマルカメムシに比べるとほとんどありません。人によるのかもしれませんが。

とはいっても、気づかずに潰してしまうのは嫌なので、家に入ってきたときはそっと外へ出しています。

年末の大掃除で普段は開けない窓を開けると、窓枠の隙間からカメムシの死骸を見つけることがあります。きっと、暖かいところを探して移動してきたのでしょう。無事越冬したら、繁殖期を迎えただろうカメムシ。越冬は簡単ではないのかもしれません。

そういえば、カメムシといえば、成虫の姿しか思い出せません。幼虫は水田など、別の場所にいるからなのでしょうか。普段の生活で幼虫と接する機会がないのでしょうね。イネカネムシの幼虫は糞を背負った姿でいるので、見つけることがそもそも難しそうです。

害虫に分類されて、歓迎されるムシではないのですが、イネカネムシの幼虫は可愛らしい姿をしています。成虫より頭の割合が多いからでしょう、ぽとっとした形がなんともいえません。幼虫の写真を見ると、いつか実物を見てみたい気持ちになります。