その可愛さに救われている


家に帰るとネコがいる。

だいたいいつも、しっぽをピンと立て鳴きながら出迎えてくれる。

たったそれだけのことで、今日あった嫌なことを家の中へ持ち帰らずに済んでしまう。家族のだれもが、帰るとネコの姿を探す。そして、必ず笑顔になる。

ネコを迎える予定など全くなかった。

生き物は好きだけれど、その命の責任を負う自信がいまいち持てなかったからだ。でも、今はネコなしの生活は考えられない。

それでも、当たり前のようにネコが家でくつろいでいる姿を見ると、不思議で仕方がなくなる。

「君はどうして、そんなに当たり前のように家族の一員になってくれたの?」「なぜ、毎日可愛いを継続し、しかもその可愛さを上書きできるの?」

「その可愛らしさは、どうやって構成されているの?」

そんな風に思ってしまう。

我が家の幸せはほとんどネコで保っている。

ネコの存在はほとんど奇跡だと思う。

おススメ対象 中学生~大人

内田百閒の『ノラや』は不思議な本だ。

繰り返される内容の重複に、嫌気がささない。

涙もろい内田百閒の姿を、ほほえましく眺めてしまう。

迷いネコのノラとクルに対する愛情の深さに、驚かされる。

そして、ネコを大切に思う気持ちに触れて、しんとした気持ちになる。

そこにはいないけれど、確かに目の前にいるネコに呼びかける、百閒の愛情の深さに見とれてしまう。

ネコを題材にした本はたくさんあって、(歌もいろいろある。打首獄門同好会の「猫の惑星」が好き)そのどれもが読んでいると暖かい気持ちになるけれど、『ノラや』は特にじんと心に染み入る本だ。