人は皆それぞれ違う。
そんなことは分かり切っている。そう思っている。
あなたと私は違う人間だから、得意なこと、出来ないことはそれぞれ違う。
そんなことは言われなくてもちゃんと知っている。はずだ。
でも、いろんな人に出会う毎日の中で、「なんでこの人はこんな簡単なこともできないの?」「なぜ、この人が軽やかにやってのけることが、私にはできないの?」としばしば感じてしまう。
目の前にいる人が、自分とは全く違う人間だと分かっていても、例えば約束を守らないことに対して、「実行できないなら、そもそも約束なんてしなければいいのに」と憤りを感じてしまう。
目の前で朗らかに仕事をこなす人を見ると「自分はどうしてこんなにひねくれた人間でしかいられないのだろう」と自己嫌悪に陥ることもある。
相手と自分が全く同じ人間でないことは分かっているのに、安易に比べてしまう。そして、それを今日も明日も繰り返す。
我が子と接するときなんて、特にそうだ。自分とは違う人間だと分かっていても、思う通りの行動をしない子どもらに、私はついイライラしたり、モヤモヤしたり、ガッカリしてしまう。
明らかに矛盾した考え方だ。そして、そんな矛盾に普段は気付かないまま日々を過ごしている。
気付けていないから、憤慨したりがっかりしてしまっているだけなのに。
そんな自分に、はたと気づかせてくれる。
見えない広瀬さんと、聞こえない相良さん。
本なのに、二人のほがらかで絶え間ないおしゃべりが聞こえてくるようだった。目の前で話を聞いてるように感じられるからか、内容がすっと入ってきて読みやすい。
人間関係で悩んでいたり、どう生きていこうか悩んでいる人の背中をバシッとおしてくれる。
読んでしばらく経つけれど、なんだが他の人のことがあまり気にならなくなった。
人は人。自分は自分。
その違いの中で、出来ることには手を貸し、出来ないことは助けてもらいながら生きていけばいい。それでいい。