庭のムシ⑬

イソギクの花の上に光沢のあるハエらしきものがいました。
おそらく「キンバエ」だろうと思います。
ハエのなかでは、あまり馴染みのないハエです。
子どもの頃住んでいた家の中には、ハエ取り用のリボンがたくさんぶら下がっていたのを覚えています。それだけ、ハエがたくさんいる環境だったのです。あのときたくさんいたのは「イエバエ」でした。
ハエ取りリボンは、気を付けないと髪の毛にくっつくことがあります。そうなった場合、髪を切るしかありませんでした。あれは結構痛かったなぁ。
ハエ取りリボンのことを思い出すと、ねじめ正一さんの『高円寺純情商店街』が頭に浮かびます。その小説のなかに、「六月の蠅取紙」というお話があるからです。確か国語の教科書にも載っていたはずです。
今の子が、このお話を読んでも、「蠅取り紙」がどんなものか想像することが難しいかもしれません。「蠅取り紙」の与える郷愁は、そのうち感じ取れない人ばかりになるのでしょうね。
もう今は、ハエ取りリボンをぶら下げている家は少ないでしょうが、ハエ取りリボンはまだ買うことができるみたいです。
ハエはどこにでもいて、何かするわけではないけれど「五月蠅い」という言葉があるくらい、確かにうるさい存在でした。
家の中に一匹いるだけでも、気になる存在ですが、今は、ハエに遭遇することが少なくなっている気がします。
牛舎や豚舎など、家畜が近くにいないところで暮らしているし、夏の間はエアコンをつけ、締め切った生活を送っているからでしょう。ハエが繁殖しやすい環境ではないのかもしれません。
ただ、我が家の畑にはコンポストがあるので、どのハエの幼虫か分かりませんが、暖かくなると幼虫がまあまあ、たくさん発生します。
でも、成虫にはそんなに遭遇しません。なぜなんだろう。
子どものころと比べると、ずいぶん生活スタイルが変化したのだろうと、ハエについて考えることで思い至りました。
